お部屋に緑を増やしたいと考えたとき、人気の観葉植物フィカスは魅力的な選択肢です。特に、フィカスの挿し木や水差しに挑戦して、お気に入りの一本を増やしてみたいと思う方も多いのではないでしょうか。しかし、実際に試してみると、フィカスの水差しで根が出ない、あるいは発根しないで終わってしまうケースは少なくありません。
ウンベラータの挿し木で失敗して腐る経験をしたり、そもそもウンベラータの水差しでは切る場所はどこが正しいのか、切ったときに出てくる白い液体は何なのか、といった疑問に突き当たることもあります。また、水に挿した枝にカルスという白い粒々ができて驚いたり、フィカスの葉っぱだけで水差しは可能なのか、寒い冬の時期でも挑戦できるのか、と次々に知りたいことが出てくるものです。
そして、ようやく発根した後のウンベラータの水差しからの植え替えタイミングも、初心者にとっては悩ましいポイントと言えます。
この記事では、そんなフィカスの挿し木と水差しに関するあらゆる疑問や不安を解消します。基本的な手順から、失敗しないための具体的なコツ、トラブルの対処法まで、分かりやすく丁寧に解説していきます。
この記事を読むと分かること
- フィカスの水差しに最適な時期と具体的な手順
- 発根しない、腐るといった失敗の原因と対処法
- 水差し中のカルスなど、発根のサインの見極め方
- 発根後の適切な植え替えタイミングと管理方法
フィカス挿し木の水差しを成功させる基本手順
- ウンベラータ水差しの時期と冬の注意点
- ウンベラータ水差しの切る場所はどこが最適?
- フィカスの葉っぱだけでも水差しはできる?
- ウンベラータ水差しで見る白い液体とカルス
- ウンベラータは発根するまでに何日かかるのか

ウンベラータ水差しの時期と冬の注意点
ウンベラータをはじめとするフィカス属の植物を水差しで増やす際、最も成功率を高める鍵となるのが「時期」です。植物には活動が活発になる「生育期」と、成長が緩やかになる「休眠期」があり、このサイクルを理解することが最初のステップとなります。
最適な時期は春から初夏
フィカス属の水差しに最も適した時期は、気温と湿度が安定して上昇し始める5月から7月頃です。この時期はフィカスが一年で最もエネルギッシュに成長する生育期にあたります。生育期に水差しを行うことには、いくつかの明確なメリットが存在します。
第一に、発根のスピードと確率が格段に上がります。植物本体が持つ生命力が強いため、切り取られた枝(挿し穂)も新しい根を出すエネルギーに満ちあふれています。第二に、親株への負担が少ない点も挙げられます。枝を切り取る「剪定」は植物にとって少なからずダメージとなりますが、生育期であれば回復も早く、すぐに新しい芽を吹いてくれます。
逆に、真夏の猛暑日(35℃以上)が続く時期は、人間だけでなく植物にとっても過酷な環境です。そのため、水が腐敗しやすくなったり、挿し穂が弱ったりする可能性があるため、できれば避けた方が賢明と考えられます。
冬の水差しは可能か?
それでは、生育期を逃してしまった場合、冬に水差しを行うことはできないのでしょうか。結論から言うと、冬の水差しは可能ですが、成功率は大きく下がり、いくつかの特別な配慮が求められます。
冬は多くのフィカスが休眠期に入り、成長がほとんど止まります。この時期に水差しをしても、なかなか発根しない、あるいは発根する前に挿し穂が傷んでしまう可能性が高くなります。
もし冬に挑戦する場合は、室内で常に15℃以上の温度を保つことが最低条件です。暖房の効いた暖かいリビングなどが適していますが、暖房の風が直接当たる場所は極度に乾燥するため避けてください。また、冬は日照時間も短くなるため、窓際の明るい場所で管理することも大切です。ただし、夜間の窓際は外気と変わらないほど冷え込むため、部屋の中央に移動させるなどの工夫が必要になります。
要するに、フィカスの水差しは植物の自然な成長リズムに合わせて、5月から7月の生育期に行うのが最も簡単で成功しやすい方法です。冬に行う場合は、生育期に近い環境を人工的に作り出す手間とリスクが伴うことを理解しておく必要があります。

ウンベラータ水差しの切る場所はどこが最適?
水差しの成功は、どこから枝を切り取るか、つまり「挿し穂」の選び方と作り方に大きく左右されます。元気で発根能力の高い挿し穂を用意することが、その後の成果を決定づけると言っても過言ではありません。ここでは、ウンベラータを例に、最適な切る場所と挿し穂の準備方法を解説します。
「成長点」を含む先端部分を選ぶ
最も発根しやすく、その後の成長も期待できるのは、枝の先端部分である「天芽」です。天芽には「成長点」と呼ばれる、植物の細胞分裂が活発に行われる組織が含まれています。この成長点があることで、発根後の新芽の展開がスムーズに進みます。
剪定の際は、元気でハリのある枝を選び、先端から10cm~15cm程度の長さで切り取るのが一般的です。枝の途中部分を使うことも不可能ではありませんが、発根率やその後の成長の勢いは天芽に劣る傾向があります。
切る位置は「節」のすぐ下
枝をよく見ると、葉が出ていた跡が少し膨らんでいる部分があります。これを「節」と呼びます。フィカス属の植物は、この節の周辺から新しい根を出す性質が強いです。
そのため、ハサミを入れる位置は、節の5mm~1cm程度下が最適です。節から離れた場所で切ってしまうと、水に浸かっている部分から根が出にくくなる可能性があります。
挿し穂の準備と整え方
切り取る枝を決めたら、挿し穂として水に挿すための準備を行います。
- 清潔な刃物で切る剪定ハサミやカッターは、事前にアルコールで消毒するか、火で軽く炙るなどして殺菌しておきましょう。汚れた刃物を使うと、切り口から雑菌が侵入し、腐敗の原因となります。
- 葉の枚数を調整する挿し穂にたくさんの葉が付いていると、葉からの水分の蒸散が激しくなり、まだ根がない挿し穂は水分不足で弱ってしまいます。これを防ぐため、先端の新しい葉を2~3枚だけ残し、それ以外の大きな葉や古い葉は付け根から切り落とします。残した葉が大きい場合は、葉を半分ほどの大きさにカットすると、さらに蒸散を抑えることができます。
- 切り口を整える最後に、水に浸ける部分の切り口を、切れ味の良い刃物で斜めにスパッと切り直します。断面積を広くすることで、吸水効率が高まります。
これらの点を踏まえて適切な場所で枝を切り、丁寧に挿し穂を準備することが、ウンベラータの水差しを成功させるための重要な鍵となります。

フィカスの葉っぱだけでも水差しはできる?
剪定の際に切り落とした一枚の葉っぱ。「これも水に挿しておけば、小さな株になるのでは?」と期待する方は少なくないでしょう。フィカス属の植物において、葉っぱ一枚からの再生、いわゆる「葉挿し」は可能なのでしょうか。
葉挿しでの発根は可能
結論から言うと、フィカス属の多くは、葉っぱ(葉柄がついた状態)を水に挿しておくことで、葉柄の付け根から発根させることが可能です。生命力が強いため、葉一枚の状態でも新しい根を出す力を持っています。
水に挿してしばらくすると、切り口から後述するカルスが形成され、やがて白い根が伸びてくる様子を観察できるでしょう。この見た目のかわいらしさから、インテリアとしてガラス容器などで楽しむ方もいます。
新しい芽は出ない「ブラインド」状態
しかし、ここが最も大切なポイントですが、葉挿しで発根したとしても、そこから新しい芽が出てきて、私たちが知っているようなフィカスの木に成長することは、ほとんどありません。
植物が新しい芽を出すためには、前述した「成長点」という組織が不可欠です。通常の挿し木(茎挿し)では、枝の節に次の芽となる成長点が存在するため、発根後に新しい葉や枝を展開できます。
一方で、葉挿しの場合、葉柄の付け根には根を出す組織はあっても、新しい芽を作る成長点が存在しないのです。そのため、根が出て水分や養分を吸収することはできても、新しい茎や葉を作り出すことができず、一生「葉っぱ一枚と根」のままの状態が続きます。この状態は「ブラインド」とも呼ばれます。
まれに、葉柄の付け根に偶然ごく小さな成長点の組織が残っていて、そこから新芽が出る奇跡的なケースも報告されていますが、これは極めて稀な例外と考えた方が良いでしょう。
したがって、フィカスを増やして新しい株として育てることを目的とするのであれば、葉挿しは適した方法とは言えません。あくまで「発根する様子を楽しむ」ためのものと割り切るのが賢明です。もし株を増やしたいのであれば、必ず成長点を含む茎(枝)を用いた挿し木、あるいは水差しを行う必要があります。

ウンベラータ水差しで見る白い液体とカルス
ウンベラータなどフィカス属の枝を切ると、切り口から白い液体が出てきたり、水に挿している部分に白い粒々が発生したりすることがあります。これらは植物が持つ正常な反応ですが、初めて見ると驚いてしまうかもしれません。それぞれの正体と役割を正しく理解しておきましょう。
切り口から出る「白い液体」の正体
枝を剪定した際に切り口からにじみ出てくる白い液体は、「ラテックス」という成分を含む樹液です。フィカス属はゴムの木の仲間であり、この樹液は天然ゴムの原料にもなるものです。
この樹液には、植物自身が傷口を保護し、病原菌の侵入を防ぐ役割があります。しかし、人間にとっては注意が必要な液体です。
- 皮膚への影響ラテックスは、体質によって皮膚のかぶれやアレルギー反応を引き起こす可能性があります。特に肌が弱い方やラテックスアレルギーを持つ方は、直接触れないように注意が必要です。剪定作業の際は、念のためゴム手袋などを着用すると安心できます。もし皮膚に付着してしまった場合は、すぐに流水でよく洗い流してください。
- 処理方法切り口から出る樹液は、ティッシュペーパーなどで優しく拭き取るか、流水で洗い流します。ベタつきがあり、床や衣服に付くと取れにくい性質があるため、作業は園芸シートの上などで行うと良いでしょう。樹液の流れが落ち着いてから水に挿すのが一般的です。
発根のサイン「カルス」とは
水差しを始めて数日から数週間すると、水に浸かっている茎の切り口やその周辺に、白やクリーム色のモヤモヤとした粒状の塊が発生することがあります。これが「カルス」と呼ばれるものです。
カルスは、植物が傷口を修復しようとする過程で形成される「癒傷組織(ゆしょうそしき)」です。人間でいうところの「かさぶた」のような役割を果たします。このカルスは、未分化な細胞の集まりであり、ここから新しい根が分化して伸長していきます。
つまり、カルスの形成は、挿し穂が生命活動を維持しており、発根に向けて準備を始めた非常に良い兆候です。カビや腐敗と間違えて取り除いてしまわないように注意してください。カルスが十分に発達すると、その中から力強い白い根が顔を出すのが観察できるはずです。この変化は、水差しならではの楽しみの一つと言えます。

ウンベラータは発根するまでに何日かかるのか
水差しを始めると、毎日容器を覗き込み、「まだ根は出ないか」と心待ちにする時間が続きます。ウンベラータをはじめとするフィカス属の水差しでは、一体どのくらいの期間で発根が始まるのでしょうか。目安となる期間と、発根を促すための環境管理について解説します。
発根までの期間は環境次第
発根までの日数は、季節、気温、水温、日照条件、そして挿し穂自体の健康状態など、様々な要因によって変動します。一概に「何日で発根する」と断言することは難しいですが、一般的な目安は存在します。
最も条件の良い生育期(5月~7月)に水差しを行った場合、早ければ2週間ほどでカルスの形成が見られ、3週間から1ヶ月半程度で数ミリから数センチの白い根が確認できるようになることが多いです。
一方で、気温が低い時期や、日照が不足している環境では、植物の活動が鈍るため、発根までに2ヶ月以上かかることも珍しくありません。なかなか発根しないからといって、すぐに諦めてしまうのは早計です。挿し穂の茎が緑色でハリを保っている限り、発根の可能性は残されています。
時期・環境 | 発根までの期間(目安) | 特徴 |
最適期(5月~7月) | 3週間~1.5ヶ月 | 最も発根率が高く、スピードも速い |
夏(8月) | 1ヶ月~2ヶ月 | 高温による水の腐敗に注意が必要 |
秋(9月~10月) | 1.5ヶ月~3ヶ月 | 徐々に気温が下がり、発根が遅くなる傾向 |
冬(11月~3月) | 2ヶ月以上 | 室内での徹底した温度管理が不可欠 |
春(4月) | 1ヶ月~2.5ヶ月 | 気温の上昇とともに発根しやすくなる |
発根を促す管理のポイント
発根を少しでも早め、成功率を上げるためには、適切な環境を維持することが大切です。
- 水の交換頻度水は毎日、もしくは少なくとも2~3日に一度は必ず交換してください。古い水は酸素が欠乏し、雑菌が繁殖しやすくなります。新鮮な水を保つことが、腐敗を防ぎ発根を促す基本です。
- 置き場所直射日光が当たる場所は避け、レースのカーテン越しのような「明るい日陰」に置くのが理想的です。強い日差しは挿し穂を弱らせ、水温を上げすぎてしまいます。
- 発根促進剤の利用必須ではありませんが、メネデールなどの発根促進剤を規定の倍率に薄めて使用すると、発根がスムーズに進むことがあります。
焦らず、日々の変化を楽しみながら管理することが、発根への一番の近道と言えるかもしれません。
フィカス挿し木の水差しでよくある失敗とQ&A
- フィカス水差しで根が出ない・発根しない原因
- ウンベラータ挿し木で失敗して腐るのはなぜ?
- ウンベラータ水差し後の植え替えと水やり方法
- ウンベラータの根詰まりを解消するには?
- まとめ:フィカス挿し木の水差しを成功させよう

フィカス水差しで根が出ない・発根しない原因
期待を込めて始めたフィカスの水差しが、何週間、何ヶ月経っても一向に根を出さない。これは非常に残念な状況ですが、必ずどこかに原因が潜んでいます。ここでは、フィカスの水差しで根が出ない、あるいは発根しない場合の主な原因と、それぞれの対策を掘り下げていきます。
原因1:時期と温度が不適切
前述の通り、植物の活動が鈍る秋の終わりから冬にかけての「休眠期」に水差しを行うと、発根の能力自体が低いため、成功率は著しく低下します。また、生育期であっても、エアコンの風が常に当たるような場所や、一日中日陰で気温が上がらない場所に置いていると、植物はなかなか活動モードに入れません。
対策
水差しは、植物が最も活発になる5月~7月に行うのが鉄則です。もし他の時期に行う場合は、室温を最低でも15℃以上、できれば20℃~25℃程度に保てる環境を用意することが不可欠です。
原因2:挿し穂の選択と準備に問題があった
挿し穂自体のコンディションも、発根を大きく左右します。例えば、細く弱々しい枝や、病害虫の被害にあった枝、木質化しすぎた古い枝などを選んでしまうと、発根するエネルギーが不足している場合があります。また、葉を多く残しすぎると、蒸散が激しくなり、吸水が追いつかずに挿し穂全体が弱ってしまいます。
対策
挿し穂には、その年に伸びた若々しく元気な枝の先端(天芽)を選びましょう。葉は2~3枚に整理し、大きな葉は半分にカットして蒸散を抑制します。切り口を鋭利な刃物で斜めに切り直し、吸水面を広く確保することも有効な手段です。
原因3:水の管理ができていない
水差しで最も多い失敗原因の一つが、水の管理です。水道水をそのまま使っていても、長期間交換しないと水中の酸素が減少し、雑菌が繁殖してしまいます。水が濁っていたり、挿し穂の切り口がぬるぬるしたりしているのは、水が腐敗しているサインです。このような環境では根が出る前に腐ってしまいます。
対策
水は毎日交換するのが理想です。最低でも2~3日に一度は全ての水を入れ替え、その際に容器もきれいに洗いましょう。容器のぬめりも雑菌の温床となるため、清潔を保つことが大切です。
これらの原因を見直し、適切な対策を講じることで、発根しない状況を打開できる可能性は十分にあります。諦める前に、もう一度管理方法を確認してみてください。

ウンベラータ挿し木で失敗して腐るのはなぜ?
水差し中に挿し穂が発根せず、逆に茶色や黒に変色し、ぶよぶよと柔らかくなってしまう「腐敗」。これは、ウンベラータをはじめとする挿し木で最も避けたい失敗です。腐敗が起こる主な原因は「雑菌の繁殖」にあります。では、なぜ雑菌が繁殖してしまうのでしょうか。
腐敗を引き起こす主な要因
腐敗は、複数の要因が絡み合って発生することが多いです。
- 不潔な道具や容器の使用剪定に使うハサミや、挿し穂を入れる容器が汚れていると、そこに付着していた雑菌が切り口から侵入したり、水中で繁殖したりします。目に見えない汚れが、失敗の直接的な原因になることは珍しくありません。
- 水の交換不足前項でも触れましたが、水の交換を怠ると、水中に雑菌が爆発的に増殖します。特に気温が高い夏場は、わずか1~2日で水が傷み始めることもあります。水の停滞は、腐敗菌にとってこの上ない好環境を提供してしまうのです。
- 挿し穂の切り口が傷んでいる切れ味の悪いハサミで枝を潰すように切ってしまうと、切り口の細胞が傷つき、そこから雑菌が侵入しやすくなります。また、一度腐り始めた部分をそのままにしておくと、健康な部分にまで腐敗が広がっていきます。
- 風通しの悪い環境空気がよどんでいる場所では、湿度が高止まりし、カビや雑菌が繁殖しやすくなります。特に梅雨時期などは、意識的に風通しを確保する必要があります。
腐敗を防ぐための具体的な対策
これらの原因を踏まえ、腐敗を防ぐためには以下の対策が有効です。
- 徹底した殺菌作業を始める前に、使用するハサミ、カッター、容器は必ずアルコール消毒や熱湯消毒を行いましょう。
- こまめな水換えと容器洗浄水は毎日、新鮮なものに交換することを習慣づけます。その際、容器の内側も指でこするなどしてぬめりを洗い流し、常に清潔な状態を保ちます。
- ミリオンAなどの活用珪酸塩白土(けいさんえんはくど)を主成分とする「ミリオンA」などの根腐れ防止剤を、容器の底に少量入れておくと、水を浄化し、雑菌の繁殖を抑制する効果が期待できます。
もし、挿し穂の一部が腐り始めてしまった場合は、手遅れになる前に対応が必要です。腐敗した部分を多めに、清潔な刃物で切り落とし、再度新しい水で水差しを試みてください。この初期対応が、挿し穂を救う鍵となります。

ウンベラータ水差し後の植え替えと水やり方法
水差しで無事に発根したウンベラータの挿し穂。次のステップは、いよいよ土に植え替えて、一本の独立した観葉植物として育てる段階です。しかし、この植え替えのタイミングと方法を間違えると、せっかく出た根が傷んでしまうこともあります。適切な手順を理解し、慎重に作業を進めましょう。
植え替えの最適なタイミング
水の中で育った根は、非常に繊細で、土の環境にすぐ適応できるわけではありません。植え替えのタイミングを見極めることが、その後の生育をスムーズにする上で大切です。
一般的に、根の長さが5cm~10cm程度まで伸び、数本の根が出揃った頃が植え替えの適期と考えられます。
根が短すぎると、土の中で水分や養分を十分に吸収できず、株が弱ってしまいます。逆に、長く伸びすぎてから植え替えると、水中の環境に慣れすぎた根が土の環境変化にストレスを感じやすくなったり、植え替え作業中に繊細な根を傷つけてしまったりするリスクが高まります。
植え替えの手順
植え替えは、植物への負担を最小限にするため、手早く、かつ丁寧に行うことが鍵となります。
- 準備するもの
- 鉢:挿し穂の大きさに合わせた小さめの鉢(3号~4号程度)を用意します。大きすぎる鉢は、土が乾きにくく根腐れの原因になります。
- 用土:必ず新品で清潔な「観葉植物用の土」や「挿し木・種まき用の土」を使いましょう。古い土の再利用は病害虫のリスクがあります。
- 鉢底石と鉢底ネット:水はけを良くするために鉢の底に敷きます。
- 鉢:挿し穂の大きさに合わせた小さめの鉢(3号~4号程度)を用意します。大きすぎる鉢は、土が乾きにくく根腐れの原因になります。
- 植え付け作業
- 鉢に鉢底ネットを敷き、鉢底石を底が見えなくなる程度に入れます。
- 用土を鉢の3分の1程度まで入れます。
- 発根した挿し穂を鉢の中央に置き、根を傷つけないように注意しながら、周りから用土を足していきます。
- 割り箸などで土を軽くつつきながら、根の間に隙間ができないように土を入れます。このとき、土を強く押し固めすぎないように注意してください。
- 鉢の上縁から2~3cm下(ウォータースペース)まで土を入れたら、植え付けは完了です。
- 鉢に鉢底ネットを敷き、鉢底石を底が見えなくなる程度に入れます。
植え替え後の水やりと管理
植え替え直後の管理は、新しい環境に根を順応させるための重要な期間です。
- 最初の水やり植え付けが終わったら、鉢底から水が流れ出るまで、たっぷりと水を与えます。これにより、土と根が密着し、根の活着が促されます。
- 置き場所植え替え後、最低でも1~2週間は、直射日光の当たらない明るい日陰で管理します。この期間は「養生期間」であり、植物が新しい環境に慣れるための時間です。
- その後の水やり養生期間中は、土の表面が乾いたら水を与えるようにします。常に土が湿っている状態は根腐れにつながるため、水のやりすぎには注意が必要です。新しい芽が動き出すなど、成長の兆しが見られたら、徐々に通常の水やり管理に移行していきます。

ウンベラータの根詰まりを解消するには?
水差しから育てたウンベラータが順調に成長し、数年が経過すると、今度は「根詰まり」という新たな問題に直面することがあります。根詰まりは、鉢の中で根が伸びるスペースがなくなり、窮屈な状態になることです。これは植物の健全な成長を妨げるため、適切なタイミングで解消してあげる必要があります。
根詰まりのサインを見逃さない
ウンベラータが根詰まりを起こしているとき、いくつかのサインを発します。これらのサインに気づくことが、植え替えのタイミングを知る上で大切です。
- 鉢底から根が見えている最も分かりやすいサインです。鉢の底穴から根がはみ出してきている場合、鉢の中は根でいっぱいになっている可能性が高いです。
- 水の浸透が悪くなった水やりをした際に、水がなかなか土に染み込んでいかず、鉢の表面に溜まる時間が長くなったら注意が必要です。これは、鉢の中に根が密集し、水の通り道がなくなっている証拠です。
- 下葉が黄色く変色して落ちる生育期にもかかわらず、下の方の葉が次々と黄色くなり、落葉が続くことがあります。根詰まりによって水分や養分の吸収がうまくいかなくなり、植物全体に栄養が行き渡らなくなることが原因の一つとして考えられます。
- 株全体の成長が鈍化する以前と比べて、新しい芽の出が悪くなったり、葉のサイズが小さくなったりした場合も、根詰まりを疑うべきサインです。
根詰まりの解消法「植え替え」
根詰まりを解消する唯一の方法は、より大きな鉢に植え替えることです。作業の適期は、植物の成長が活発な5月~7月頃です。
- 鉢から株を抜く鉢の縁を軽く叩きながら、株元を持って慎重に引き抜きます。根が張って抜けない場合は、無理に引っ張らず、鉢を壊す覚悟が必要な場合もあります。
- 根鉢をほぐす鉢から抜いた根鉢(根と土が一体化したもの)の周りの古い土を、3分の1程度、手や割り箸で優しくほぐし落とします。固く絡み合った根は、少しずつほぐしてください。このとき、黒ずんで腐った根や、長すぎる根があれば、清潔なハサミで切り詰めます。
- 新しい鉢に植えるこれまで使っていた鉢より一回り(直径で3cm程度)大きい鉢を用意し、鉢底石と新しい用土を入れて植え付けます。手順は、前述の挿し穂の植え替えと同様です。
植え替えは、植物にとって一時的にストレスとなりますが、成長のためには欠かせない大切な作業です。定期的なメンテナンスで、ウンベラータが健やかに育つ環境を整えてあげましょう。

まとめ:フィカス挿し木の水差しを成功させよう
- フィカスの水差しは剪定した枝を有効活用できる増やし方
- 最適な時期は植物の活動が活発な5月から7月の生育期
- 冬の水差しは可能だが室内で15℃以上の温度管理が必須
- 挿し穂は成長点を含む元気な枝の先端(天芽)を選ぶ
- 切る場所は発根しやすい節の5mm~1cm下が理想
- 挿し穂の葉は2~3枚に減らし蒸散を防ぐことが大切
- 葉っぱだけの葉挿しは発根しても新しい株には成長しない
- 切り口の白い液体は樹液で皮膚への付着に注意する
- 水差し中の白い粒々「カルス」は発根の嬉しいサイン
- 発根までの期間は環境により3週間から2ヶ月以上と様々
- 発根しない主な原因は時期、挿し穂の状態、水の管理にある
- 腐敗を防ぐには清潔な道具とこまめな水換えが最も重要
- 根が5cm~10cm程度伸びたら土への植え替え時期
- 植え替え後は直射日光を避けた明るい日陰で1~2週間養生する
- 成長後の根詰まりはより大きな鉢への植え替えで解消する